債務整理における偏頗弁済(へんぱべんさい)について詳しく解説

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささき かずお)

借金が増えてどうにもならなくなった時は、自己破産などの債務整理をして借金問題を解決しようとするでしょう。

ただし、債務整理には制約が多々あり、特に債務者がおかしがちな注意点があります。

それが、偏頗弁済(へんぱべんさい)です。

偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、知人や親類などの特定の人だけに借金を返済することをいいます。

本来、債務者は債権者に対して公平に債務を弁済しなければいけません。

しかし、この法律を知らず、ついつい身内などの親類を優先し、返済において贔屓してしまうことがよくあります。

今回は、そんな特定の債権者を優遇して借金を返す偏頗弁済(へんぱべんさい)について、詳細に解説していきます。

偏頗弁済とは、特定の債権者だけに借金を返すこと

偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、特定の債権者だけを優遇し、優先して借金を返すことをいいます

破産の原則に、債権者平等の原則というものがあり、複数の債権者がいる場合は、全ての債権者を平等に扱わなければいけません。

法的には公平に債権者に対し弁済しなければならないのですが、人間の感情として債権者をランク分けし、お世話になった人や親類を優先的に厚遇してしまうことはよくあります

債務者がこの法律を知らずに、身内などを優先した場合は、自己破産などができなくなる可能性もあるので注意が必要です。

偏頗弁済は免責不許可事由に該当する

自己破産などの債務整理をするとき免責不許可事由に該当すると免責の許可が下りません。

偏頗弁済はこの免責不許可事由に該当してしまうので注意が必要です

破産法の第252条第3項に以下のような文言があります。

免責許可の決定の要件等

第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

この3項が偏頗弁済に該当します。

つまり特定の債権者を優遇した場合は、免責不許可事由に該当し、免責の許可が下りなくなります

偏頗弁済をすると債務整理ができなくなる

偏頗弁済をすると自己破産などの債務整理ができなくなる可能性が高まります

偏頗弁済は免責不許可事由に該当するので、免責許可が下りないからです

仮に認められても簡易的な手続きである同時廃止ではなく、費用と時間がかかる管財事件として処理されてしまいます。

偏頗弁済に当たってしまう個別ケース

自分では法的に問題がないと思っていても偏頗弁済に該当してしまうこともあります

ここでは偏頗弁済に該当してしまう個別ケースについて解説していきます。

身内を優先してしまう

債務整理を弁護士等に依頼した後、親族だけを優遇してしまった場合は、偏頗弁済に該当します

自己破産等の債務整理を開始したら親族などの身内も他の債権者も同等に扱わなければなりません。

もし身内を優先した場合は、免責不許可事由に該当し、自己破産などの債務整理ができなくなってしまいます。

身内や友人を優先したい気持ちは人情として理解できますが、法律違反になるのでやめましょう

車やバイクローンを優先してしまう

生活の足として買った車やバイクを手放したくないという気持ちからローンを優先してしまう方がときどきいます

自己破産するとほぼ確実にローン会社に車やバイクを没収されてしまいます。

なんとか車やバイクだけは残したい気持ちも分かりますが、偏頗弁済に該当してしまうので優先的に返済するのはやめましょう

自己破産以外の債務整理なら車やバイクを残せる可能性もあるので、債務整理に詳しい弁護士にご相談ください。

偏頗弁済に当たらない個別ケース

一見、偏頗弁済に見えても偏頗弁済に該当しないケースもあります

ここでは偏頗弁済に該当しないケースをご紹介します。

家賃の支払いは偏頗弁済に該当しない

借りている家に住み続けるために優先的に家賃を支払っていても偏頗弁済に該当しない場合が多いです

持ち家等のローンは別ですが、賃貸の場合はほとんど偏頗弁済に該当しないので安心してください

また、賃料を滞納している場合、自己破産手続きが認められれば、免責の許可がおり、賃料の滞納金もゼロになります。

まとめ

自己破産などをする場合、本来は公平に債権者に弁済しなければなりません(債権者平等の原則)。

しかし、特定の債権者だけを優遇し、優先して借金を返してしまうことを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいます

偏頗弁済は、破産法の第252条第3項の免責不許可事由に該当してしまい、自己破産手続きをしても免責の許可がおりません。

その他の条件をクリアしていても偏頗弁済に該当すると自己破産などができなくなってしまいます。

友人や知人、親戚などを優先したい気持ちは人情として理解できますが、特定の債権者を優遇して借金の返済をすることは法律違反になるので絶対に避けましょう

偏頗弁済に該当するか否かが分かりづらいケースも多々あるので、詳細は債務整理に詳しい弁護士にご相談ください

せっかく自己破産などの債務整理をしようと思っても、免責不許可事由に該当してしまい、免責の許可が下りなかったら元も子もありません。

確実に債務整理をするためにも、業務経験が豊富な弁護士に頼ってみてください

偏頗弁済など、一人では理解しづらい法律用語も弁護士が丁寧に分かりやすく解説いたします。

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