任意整理と特定調停の違いとは?

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささき かずお)

複数の借金を整理する債務整理のひとつに、「任意整理」があります。任意整理と非常によく似た方法に、「特定調停」という制度があり、どちらも貸金業者(債権者)との交渉によって返済条件を見直してもらい、借金を整理するという手続きです。

2つの大きな違いは、任意整理は弁護士が債務者の代理人になり、貸金業者(債権者)と交渉をおこなう「私的な手続き」であるのに対し、特定調停は裁判所が貸金業者と債務者の仲裁をおこなう「公的な手続き」であるという点です。

そのほかにも、手続費用や貸金業者からの取り立てが止まるタイミングなどに違いがあります。

わかりやすく両者の違いを説明していきますので、どちらを選択するか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。

任意整理・特定調停とは

任意整理

任意整理は裁判所を通さず、弁護士などの専門家が債務者の代理人となって貸金業者と交渉をおこないます。

原則3~5年で無理なく借金を完済するために、遅延損害金や将来利息などをカットし、借金総額を減額してもらうという交渉が一般的です。

特定調停

特定調停は、原則として債務者自身が裁判所を通しておこなう手続きです。債務者が裁判所に申し立てをおこなうと、裁判所は「調停委員」を選任します。

この調停委員が債務者と貸金業者の間に入って、借金の返済条件が合意できるように仲裁します。

任意整理と特定調停の共通点

借金総額の減額方法が同じ

任意整理も特定調停も、利息制限法に基づいた金利(15~20%)で引き直し計算をおこない、借金元本の見直しをします。

さらに将来利息のカットにより、借金の総額を減額するという方法です。任意整理も特定調停も、借金の完済期間は原則3~5年です。

整理する借金を選べる

「車を手放したくないのでカーローンは整理から外す」「保証人に迷惑をかけないため、保証人の付いている借金は整理から外す」というように、任意整理も特定調停も、整理する借金を自由に選択することができる、大きなメリットのある方法です。

話し合いで和解を目指す

任意整理では、弁護士が債務者の代理人として各貸金業者と交渉をおこないますが、特定調停では裁判所の選任した調停委員が仲裁役となり、債務者本人が直接貸金業者と交渉をします。どちらも話し合いで条件交渉をおこない、和解を目指すという共通の方法です。

尚、調停委員はあくまでも中立的な立場で仲裁をする役割であり、貸金業者を説得してくれるわけではありません。

任意整理と特定調停の違い

借金の取り立てが止まる時期

任意整理では、弁護士に手続きの依頼をした翌日には受任通知が発送され貸金業者からの取り立てはすぐに止まります。

しかし、特定調停の場合は、裁判所に申し立てをしないかぎり取り立てや督促は止まりません。

申し立てには、必要書類の作成や準備をする期間が必要なため、その間は取り立てが続くことになります。一刻も早く貸金業者からの取り立てから解放されたい場合には、任意整理がいいでしょう。

借金より多い過払い金の扱い

任意整理では借金額よりも多い過払い金が発生した場合、過払い金で借金を完済し、残った過払い金を現金で返還してもらう交渉が可能です。特定調停では、過払い金で借金はゼロになりますが、借金額を超えた分の過払い金返還請求はできません。

そのため、別途裁判をおこない、借金額を超えた過払い金の返還請求をおこなう必要があります。

手続きに費やす手間と時間

任意整理の手続きは、弁護士に手続きを依頼すると、すべての手続きや交渉を任せることができます。債務者本人は書類の準備や貸金業者と交渉をする手間は一切なく、手続きのために時間を割く必要もありません。

特定調停の場合、債務者本人が裁判所に提出する書類を作成し、裁判所に出向いて申し立てをおこないます煩雑な書類の作成や準備に手間と時間をかける覚悟が必要です。

また、裁判者で各貸金業者と話し合いをおこなうため、複数の貸金業者を整理する場合は、何度も裁判所に足を運ばなければなりません。土日祝日は裁判所が開廷していないので平日に仕事を休んで出頭する必要があります。

手続きにかかる費用

特定調停の最大のメリットといえるのは、手続きの費用が格段に安いことでしょう。もともと特定調停は、弁護士費用を準備できない債務者のために設けられた制度のため、貸金業者1社につき500円となっており、郵便切手代などの必要経費を入れても、1社あたり1000円程度で手続きが可能です。

任意整理の場合、全ての手続きを弁護士に委任することになるため、1社あたりの着手金は2万円~3万円が相場となっています。

特定調停で注意すべき点

特定調停後の滞納は財産を差押えされる

特定調停が成立すると、「調停調書」という書面が作成されます。これには、話し合いで決定した返済計画に沿って返済が実行できない場合は、「強制執行をする」という規約が書かれています。

そのため、特定調停後に返済が滞った場合は、給与などの財産を差し押さえられてしまいます。

遅延損害金が増える場合がある

任意整理の和解契約では、将来利息や遅延損害金は原則カットされますが、特定調停の場合、遅延損害金が増える場合があります。

特定調停の手続きをしている間は借金の返済が止まっているため、貸金業者は遅延損害金(経過利息)を加算し、借金額が増える可能性があります。

まとめ

【任意整理と特定調停の違い】

  • ①特定調停は債務者が自分で手続きをおこなう。(時間と手間がかかる)
  • ②特定調停の方が手続き費用は安い。
  • ③任意整理の方が貸金業者からの取り立てが早く止まる。
  • ④特定調停では借金額を超える過払い金の返還請求ができない。
  • ⑤特定調停後の滞納で財産を差し押さえられる。

特定調停と任意整理はよく似た方法ですが、メリット・デメリットは異なります。

借金の解決に手間や時間をかけたくない場合や多額の過払い金が予測される場合は任意整理の選択をおすすめします。煩雑で厳格な書類の作成や準備が可能で費用を抑えたい場合は特定調停を選択することになります。

費用は別途必要になりますが、専門家に書類の作成だけ依頼することも可能です。

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