保証人と連帯保証人の違いとは?

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささき かずお)

貸金業者から借入れをするときに、保証人や連帯保証人を求められるケースがあります。

保証人や連帯保証人は、債務者(お金を借りた人)が返済できないときに、債務者に代わって借金を肩代わりする責任と義務がある立場です。

保証人と連帯保証人は同様の認識をされている人も多いようですが、保証人と連帯保証人では保証しなければならない金額や、主張できる権利の点では大きな違いがあります。

それぞれの違いを知らずに、保証人や連帯保証人を引き受けてしまうと、思わぬ大きなリスクを負うことになりかねません。

保証人と連帯保証人の違いや、債務者が借金を返済できなくなった場合どのような影響があるか、わかりやすく説明していきます。

保証人と連帯保証人の違い

連帯保証人の方が責任は重い

保証人と連帯保証人では、連帯保証人の方が課せられる責任が重く債務者と同等の義務を負わなければならない立場といえます。

債務者が借金の延滞や滞納をして、貸金業者から保証人や連帯保証人に返済請求がきた場合、保証人には主張できる権利が3つあり、貸金業者の請求に抵抗する余地があります。

しかし、連帯保証人には主張できる権利はなく、原則貸金業者の請求に応じるしかないのです。

保証人の3つの権利

保証人が主張できる権利は次の3点になります。

➀催告の抗弁権

「催告の抗弁権」とは、貸金業者がいきなり保証人に支払いを請求してきた場合に、「まず債務者に請求してください」と、主張することができる権利です。

連帯保証人はこの権利を持たないため、貸金業者の請求に従って、支払いをしなければなりません。

②検索の抗弁権

「検索の抗弁権」は、債務者に財産があるにもかかわらず、保証人に借金の請求がきた場合、「債務者の財産を差し押さえてください」と、抵抗できる権利です。財産の対象は現金だけではなく、住宅・車・証券・給与なども該当します。

連帯保証人は「検索の抗弁権」がないため、債務者が多額の財産を所有している場合でも、貸金業者に請求された金額を肩代わりしなければなりません。

③分別の利益

「分別の利益」とは、1人の債務者に複数の保証人が付いている場合、借金額を保証人の頭数で分割して負担できることをいいます。

例えば、借金額が300万円で3人の保証人がいる場合、1人100万円ずつ負担すればよいということです。

いっぽう連帯保証人には「分別の利益」がないため、貸金業者が1人に請求をしてきた場合は、複数の連帯保証人がいるとしても、借金額を人数で分割することができません。

債務者が債務整理をすると

保証人に支払いを求められる

債務者が債務整理をした場合、貸金業者は保証人に借金の一括請求をするのが一般的です。個人再生をすると、債務者の借金は5分の1程度に減額してもらえますが、保証人が支払う借金は減額されません。本来支払うべき借金額を請求されることになります。

また、自己破産をすると、債務者は借金の支払い義務がなくなり、借金から解放されますが、

その分、保証人は全額を支払う義務が生じるのです。保証人に一括請求されるのは、借金の元金だけではありません。遅延損害金や利息も含まれた金額です。

保証人が返済不可能な場合

貸金業者から一括返済を請求された借金が多額で、保証人も一括では返済できないケースもあります。その場合、分割払いに応じてくれる柔軟な業者もあるので、弁護士に交渉を依頼した方がいいでしょう。

しかし、保証人に支払い能力がなく、分割でも返済が不可能な場合は、保証人も債務整理をするしか方法はありません。

保証人制度の改正

2020年4月の民法改正によって、保証人制度に新しい項目が制定されました。

借金の保証人におけるトラブル回避の効果が期待されています。

遅延損害金を保証人に知らせる義務

債務者が何度も遅延を繰り返すなどで、分割返済ができなくなることを「期限の利益喪失」といいます。貸金業者から一括返済を求められ、遅延損害金が発生します。

これまで保証人は、遅延損害金が発生している事実を知らされることはなかったため、保証人は突然、借金と遅延損害金の一括請求を突き付けられていたわけです。

改正法により、貸金業者は「期限の利益を喪失」して2ヶ月以内に保証人に知らせる義務が定められました。通知しなかった場合は、喪失から通知するまでの間の遅延損害金は請求できなくなりました。

貸金業者が返済状況を知らせる義務

これまで保証人は、債務者の借金返済状況は知ることができませんでした。

そこで新しく制定されたのが、保証人が請求した場合、貸金業者は債務者の返済情報を知らせなければならないという規定です。

保証人は、債務者の遅延の有無や、借金残高などの確認ができるようになりました。「知らない間に借金を延滞していた」、などということが回避できるわけです。

【まとめ】

  • ①保証人よりも連帯保証人の方が責任は重い。
  • ②連帯保証人は債務者と同等の義務がある。
  • ③保証人は主張できる権利が3つある。
  • ④債務者が債務整理をすると保証人に一括返済が請求される。
  • ⑤保証人も支払い不可能な場合、保証人も債務整理をすることになる。

他人だけではなく、たとえ家族などの身内であっても保証人や連帯保証人になる際には、先々を熟慮することが重要です。

借金の返済中にリストラや病気など不測の事態が起こることもあります。債務者が遅延などでブラックリスト入りした場合、連帯保証人もローンが組めなくなるケースもあります。

保証人に関わる問題は、専門家である弁護士に気軽に相談することをおすすめします。

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