債務整理を司法書士ではなく弁護士に依頼する理由とは?

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささき かずお)

借金の問題を解決するためには、任意整理、個人再生、自己破産といった「債務整理」の手続きが必要です。

債務整理の方法によって、貸金業者(債権者)と直接交渉をおこなっていく場合もあれば、裁判所を通して手続きを進める場合もあります。

いずれにしても、債務整理手続きをおこなうには法的な知識と経験が必須です。そのため、法律の専門家に依頼するのが一般的です。

債務整理手続きをおこなう専門家には、「弁護士」と「司法書士」があります。

債務整理手続きにおける、弁護士と司法書士の違いや、弁護士に依頼するメリットなど、手続きごとにわかりやすく説明していきます。

弁護士と司法書士の違い

弁護士とは

弁護士資格は、司法試験に合格後に最高裁判所の司法修習所を経て、弁護士会に登録することで与えられます。

弁護士の業務

弁護士は、法律にかかわるすべての業務を扱うことができ、行政の不当な介入を受けずに法的活動をおこなえます。

弁護士の業務範囲は幅広く、相続や離婚問題、交通事故、債務整理などの相談からサポート、法的書類の作成・手続きなど多岐にわたります。また、訴訟をおこなうことができ、裁判所で依頼人の代理人となれる権限もあるのが特徴です。

債務整理においても、任意整理、個人再生、自己破産、いずれの手続きでも扱う業務や金額に制限はありません。

司法書士とは

司法書士資格は、司法書士試験に合格後、司法書士会に登録することで取得できます。

さらに、法務省で研修・考査を受け、法務大臣の認定を受けると「認定司法書士」となります。

司法書士の業務

司法書士の主な業務は、不動産の登記手続き、裁判所や法務局などに提出する法的な書類の作成や提出の代行などになります。

司法書士の扱える業務には制限があり、法律で定められた分野、範囲のみを扱うことができます。

司法書士には扱えない範囲がある

司法書士は140万円超えの案件は扱えない

司法書士が扱える金額には法で定められた制限があり、140万円を超える案件に関しては、法律相談や貸金業者との交渉、訴訟にも対応することができません。

債務整理手続きをする場合、1社からの借金が140万円を超えている案件は、司法書士に手続きを依頼することができません。借金額が140万円を超えている場合には、相談の段階から弁護士を選択しましょう。

過払い金の額にも注意

1社からの借金額が140万円以下であっても、過払い金が140万円を超えるケースの場合も、司法書士は扱うことができません。多額の過払い金が発生する可能性がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

司法書士が扱えるのは簡易裁判所のみ

司法書士が債務者の代理人として訴訟できるのは簡易裁判所だけで、地方裁判所や最高裁判所では代理人としての権限がありません。

任意整理手続きでの違い

弁護士は地方裁判所の訴訟も対応できる

任意整理で貸金業者との交渉が成立しない場合、訴訟に及ぶケースもあります。簡易裁判所での訴訟が難航し、貸金業者に控訴されると地方裁判所で争うことになります。

司法書士に依頼している場合は、地方裁判所での代理人になれないため、新たに代理人となる弁護士を探して依頼しなおさなければなりません。

弁護士であれば地方裁判所でも、そのまま代理人になれるので、最初の相談から訴訟、解決まで一貫して任せることができるメリットがあります。

個人再生や自己破産手続きでの違い

「書類作成代理人」と「代理人」の違い

個人再生や自己破産手続は地方裁判所でおこないますので、司法書士は依頼者の代理人としての業務はおこなえません。司法書士は、「書類作成代理人」として裁判所へ提出する書類の作成をするのがメインの役割になります。

いっぽう弁護士は、手続き全般にわたって依頼人の「代理人」になることが可能なため、依頼者に代わって裁判所へ出頭できるほか、法廷で発言をする権利もあります。

裁判官との面談を代わりに受けられる

東京地裁では、個人再生や自己破産手続きの際、「申し立」をすると同時に、裁判官との面談がおこなわれ、手続きを進めるかどうか決定されます。

本来は、申立人である依頼者が直接面談を受けますが、弁護士に依頼していれば、代理人として代わりに面談を受けてもらえます。仕事を休んで裁判所に出向く必要がなく、精神的にも時間的にも負担が軽くなるのは大きなメリットです。

司法書士の場合は代理人の権利を持たないため、依頼人が直接、裁判所に出頭して面談を受ける必要があります。

個人再生で住宅を残す交渉ができる

個人再生手続きでは、住宅ローン残った家を残すことができる制度がありますが、住宅ローンの債権者である金融機関と協議する必要があります。

高額な債務の住宅ローンでも弁護士は扱う金額に制限はないため、代理人として交渉ができます。住宅ローンが140万円を下まわることは少ないため、司法書士は対応できないケースが多いのです。

自己破産の予納金を少なくできる

自己破産手続きで、所有財産がある場合は、「管財事件」として扱われます。

管財事件になると、裁判所に原則50万円の予納金を支払う必要があります。しかし、弁護士が代理人の場合、「少額管財」と呼ばれる方法で手続きができ、予納金は20万円ですみます。

司法書士が書類を作成して、債務者が自分で申し立をした場合は、少額管財にはなりません。

【まとめ】

  • ①弁護士は法的業務に制限はない。
  • ②司法書士は1社で140万円を超える案件は扱うことができない。
  • ③弁護士は最高裁判所まで依頼人の代理人となれる。司法書士は簡易裁判所まで。
  • ④弁護士は裁判官との面談を代理人として受けられる。
  • ⑤弁護士に依頼すれば、少額管財事件になり予納金が少なくてすむ。

債務整理を依頼する場合、司法書士は弁護士に比べて報酬が10万円~20万円安いケースが多く、費用面で迷う人も多いと思います。

しかし、前述のように、弁護士に依頼することで多くの負担や手間が軽減されます。

また、高額な借金や過払い金、交渉が難しいケースは特に、弁護士に依頼するのが解決への近道です。手続きの途中で不測の事態が起こっても、弁護士であれば、どのような対処もできるので、安心して任せることができるでしょう。

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